相続対策で軽視されがちな「境界」が招く問題とその対応策
皆様、自分が所有している土地の「境界」をきちんと把握してますか?
普段の生活で隣地との境界をあまり意識していない人もいると思いますが、将来、土地を売ったり、有効活用したいと思った時には必ず、境界の把握が必要となります。
もちろん、この境界は自分で勝手に決めることはできません。境界を決めるためには、通常、土地家屋調査士などの専門家に依頼し、隣地地権者などの利害関係者の立会い、同意を経て境界が決まります。
自分が認識している境界境というものは実は他人の敷地の上だった・・・ということも少なくありません。
驚くことに、皆様が把握されている登記簿に書かれた土地の面積(地積)は、明治時代の地租改正時に測量された地積が記載されていることも少なくなく、当時の著しく精度の欠いた技術で測定した面積が記載されてるのです。
それから一度も測量をされずにいる土地が、全国に数多くあるのです。国もこれについては問題視しており、戦後から長年、予算を使って測量を実施していますが、なかなか進んでいないのが現状のようです。
では、境界がはっきりしていないとどのような問題が生じるのでしょうか?
今回は、境界が招く問題とその対策をご紹介します。
境界が招く問題
まず、始めに境界が不明確だったり、測量がされていないとどのような問題が起こるかご紹介します。
問題1:土地活用ができない
土地の正確な位置、範囲が分からないままだと間違った場所に塀や建物を建ててしまい、後に隣地との境界紛争に発展する場合があります。
実際に公共施設土地上に民間アパートが建てられており建造物の取壊しを求められるというケースもありました。
問題2:売買に支障が出る
土地を売買する時、たぶんここからここまでが土地の範囲だと思う・・・。と土地の範囲が曖昧なのは通用しません。
売主や不動産仲介業者は買主に対し境界の明示を義務付けられており、しなければならないのです。区画整理がされた土地や団地などでは境界境に杭やピンなどがあり、あらかた判明しますが、それでも買主から”境界確定測量”を求められる場合があります。
特に皆様のような地主様が広い土地を売却をされる場合、買主である需要者は開発業者と想定されますが、境界がはっきりしない土地は分筆して分譲できないため、事前に、この”境界確定測量”が欠かせません。
この境界確定は少なくとも作業に1、2か月以上はかかります。
つまり、すぐに換金化したくても出来ないのです。
また、万が一、隣地地権者からの同意が取れないなど境界確定が不調に終われば思っていた価格では買ってくれないでしょう。
・問題3:遺産分割時の公平性および課税の公平性に問題が生じる
例えば、遺産分割でA地とB地がそれぞれ100坪あると思って遺言で兄弟で分けたにもかかわらず、実際にはA地は120坪、B地は80坪しかなかったというケース。
一方、地主様の相続時には多額の相続税がかかってしまいますが、本当は正しく税務評価することで3000万円の土地なのに5000万円で申告してしまい、その分、多めに税金を払ってしまったというケースです。
これらは、なにも大げさな話ではありませんし、この手のケースはしばしば目にしてきました。
(※地主様の相続税は正しく評価することでほとんどの場合、評価が下がります。言い換えるとほとんどの場合、正しく評価されておらず、実態より多く財産として評価しがちなのです。)
問題4:災害復旧工事が遅れ、必要な公共事業も進まない
土砂崩れや洪水などで土地が崩れてしまった場合、以前の生活を取り戻すために復旧工事が急務となります。
知り合いの土地家屋調査士さんに聞くところによると広島の豪雨災害時も例外ではありませんでした。
すぐさま土地の境界を復元できるような記録、測量図などが整備されていなければ、災害復旧が遅れ、なかなか元の生活に戻れなくなってしまいます。
「測量」は境界の問題を未然に防ぐ有効な対策
境界問題を防ぐには、予め測量をしておくことがとても大切です。
測量には、「境界確定測量」と「現況測量」の2種類があります。
測量は専門家によって行われるのですが、法務局に具備される登記に記載するためには「土地家屋調査士」に依頼をします。
境界確定測量
境界確定測量とは、隣接する土地との境界線を全て確定させる測量です。
隣地の所有者もその測量に立ち会って境界を確認し決定していきます。
境界が確定すると、境界を示す印にもなる境界標(コンクリート杭や金属プレートなど)を設置します。
よく隣人との間で起こる問題が、境界の認識の相違です。
境界標を設置していればそのような問題は起こりにくく、もし隣人が間違っていたとしても境界標により、自分の土地の所有権を主張することができます。
また、相続をする時も、何人かで分ける場合は分筆(法的に1つの土地を分割する)しておけば、身内での争いも防ぐことができます。
現況測量
現況測量とは、土地の利用状況やブロック塀や境界標など依頼者が指示した点と点とを測量し、その土地の面積や現状、高低差等を把握するための測量です。
現況測量は、境界確定測量よりも費用や時間がかからず、一般的な土地では1日で終わります。
境界確定測量は目には見えない「境界」を調べて測量図を作成しますが、現況測量は、現地にある「物」を図って測量図を作成します。
隣地地権者との立会いはありません。
現況測量を行うことで、登記簿に書かれた面積や形状の違いを把握したり、固定資産税や相続税を正しく評価し、正しく納税するために効果適です。
どちらも測量には違いありませんが、用途が異なるため、用途に合わせた測量方法を選択し、依頼をすると良いでしょう。
境界を知ることはとても大切なこと
2種類の測量をご紹介しましたが、測量をすることが目的ではありません。
大切なのは土地本来の資産価値を確定することです。
いわば土地を商品化しておくことです。
費用は境界確定測量の場合4、50万円~。
地主様ですと100万円以上に及ぶことがありますが、市街地であれば、やっておいて損をすることはありません。
不動産のまつわる相続対策のテーマとしては、未だにアパート建てるか建てないか?の話が蔓延しているようですが、実は境界をはっきりさせておくことは地主様には相続対策の一つとしてとても大切な事だと思います。
「杭を残して悔いを残さず。」
将来、相続が発生したとき、家族で争うことなく、かつ分ける(分筆)のを容易にするため。
相続税納税のため売却する際に少しでも高くスムーズに処分するため。
そして適正に正しく評価して相続税を払い過ぎないようにするため。
まだ目の黒いうちに残される家族のために施しておいてはいかがでしょうか。